ここから本文です。

憧れの存在を追いかけて、御前崎から世界へ

プロウインドサーファー

野口 颯さん

プロウインドサーファーの父の影響を受け、小学2年生でウインドサーフィンを始めた野口颯さん。2022年に中学3年生でプロ資格を獲得し、同年12月に行われたコールドブリーズ2022プロアマトーナメントJWAジャパンツアーウェイブ第1戦では、初のプロ戦にして第4位に輝きました。世界でトップ争いを繰り広げる御前崎出身の先輩選手を追いかけて、成長が止まらないルーキーです。

「波や風と一体になる、その感覚に魅せられて」

――ウインドサーフィンを始めたきっかけは?

プロウインドサーファーの父の影響です。昔から自然と触れ合うことが好きで、小学2年生の頃から父に連れられて月に一度ウインドサーフィンのクラブに参加するようになりました。本格的に試合に出るようになったのは小学5年生の頃です。それまでは遊び感覚でやっていましたが、初めて出場した全日本大会のビギナークラスで優勝できたことが自信につながり、高みを目指すようになりました。

コーチはずっと父がやってくれています。とはいえやっぱり家族だから、指摘されるとついムキになってしまって、いつも6割くらいは聞き流していました(笑)。でも、残りの4割のアドバイスをしっかりと蓄積してきたおかげで今の実力まで成長することができたと思います。今でも現役の父を尊敬していますが、もう心の中では父に勝てたと思っているので、試合で対戦できる日が楽しみです(笑)。

――ウインドサーフィンの魅力、競技を続けるモチベーションは?

ウインドサーフィンは、自分と自然が一体にならないとできない競技です。波と風を味方につけて、自分では出せないようなスピードで海の上を滑っていると、自然のダイナミックさを全身で感じられます。それがウインドサーフィンの一番の魅力ですね。

大会に出るようになってからは、自分の実力がどこまで通じるのか、緊張のなかでどれだけの技を繰り出せるかという新たな楽しみを見出すことができました。今では試合で勝つことの楽しさが大きなモチベーションになっています。

昔は練習が楽しくないと思うことも正直たくさんあったけれど、周りに実力を認めてもらえるようになってから、自分より上にいる選手を見て「あの人がやっている技を習得したい」「あの人と一緒に波に乗ってみたい」と思うようになりました。

御前崎には、世界でトップ10に入っている選手など、活躍している先輩がたくさんいらっしゃいます。いつか追い越したい存在が身近にいるということも、僕が向上心を持って続けられた一つの理由です。

「悔しい経験を経たからこそ、次は絶対に優勝できる」

――1日のスケジュール、練習内容を教えてください。

平日は午後3時くらいに学校から帰ってきて、日が沈むまで練習をしています。朝しか風が吹かない日もあるので、そういうときは朝5時に起きて寝癖のまま海に向かって、練習が終わったら支度をして学校に行きます。土日は基本的に朝の10時くらいから、お昼休憩を挟んで夕方5時半くらいまで練習しています。

海では波乗りの練習がメインです。最近では特に高いジャンプに力を入れています。また、僕はウインドサーフィンで一番大切なのは体幹だと考えているので、海での練習に加え、陸では空手やボルダリングなどを行い、体の中の筋肉を鍛えるようにしています。

おかげで脚力には自信がつきました。ウインドサーフィンは、波に乗るときもジャンプするときも足を強く踏み込むのですが、そうした「踏ん張り」においては誰にも負けたくないと思っています。

昨年はスペインのグラン・カナリア島で行われた世界大会のユースクラスに出場し、1回戦で敗退してしまいました。普段練習している御前崎は風が西から吹くのに対し、スペインは逆の東から吹くため、環境の影響もあったとはいえ、試合前の心の整え方が不十分だったことが敗因でした。しかし、そうした失敗を生かしてメンタル面の強化や環境に左右されないトレーニングをしてきたおかげで、その後行われた大会ではプロの部で日本4位になることができたので、良い負け方だったと思います。次にスペインで同じ大会に出るときは絶対に優勝できると思っています!

――学校と競技との両立は大変ではないですか?

僕はウインドサーフィンも好きだけど、学校も好きなので苦ではありません。学校にはウインドサーフィンとはまた違った楽しみがあって、気分転換にもなるので、なるべく行きたいと思っています。

他にも僕は音楽が好きで、ドラムやベース、ピアノなどいろんな楽器をやっています。3年前からはギターも始めました。楽器は英語以外で海外の選手とコミュニケーションを取る手段にもなるので、やっておいてよかったです。

「ウインドサーフィンの魅力を広めて、自然と人とをもっとつなげたい」

――1年後、3年後、10年後の目標は?

今年は御前崎とスペインのグラン・カナリア島で行われる世界大会に出場し、ユースクラスでの優勝を目指します。そして、3年後にはまず日本チャンピオンになりたいです。そこから世界へと活躍の幅を広げ、10年後には世界チャンピオンの座に着きたいと思います。世界チャンピオンという目標を達成したら、ウインドサーフィンを広める活動もしていきたいです。こんなふうに自然と触れ合えるスポーツってやっぱりなかなかないので、もっとたくさんの人に楽しんでほしいですし、日本で少しでもウインドサーフィンが広まることで、自然環境について考える人が増え、海がきれいになるといいなと思っています。

――静岡でウォーターサイドスポーツを楽しみたい人へメッセージをお願いします。

御前崎の海の魅力は、なんと言っても風の強さです。世界中のどこを探しても、御前崎ほど良い風の吹く海岸にはなかなか出会えないと思います。また、静波海岸は台風が近づいてくるとハワイのようにきれいな波が来るので、大好きな場所です。

ウインドサーフィンやサーフィン、スタンドアップパドルなどのスポーツは、そうした静岡の海の魅力をダイレクトに感じられるスポーツです。やったことがない人にとっては、ジェットコースターに初めて乗ったときと同じような興奮が味わえるかもしれません。皆さんにもぜひ、人生に一度はウォーターサイドスポーツをやってみてほしいなと思います。

 

【プロフィール】
野口 颯 (のぐち りゅう)
2007年4月21日生まれ
静岡県御前崎市出身

インスタグラム:ryu_noguchi39

■経歴
2022年1月 第21回全日本アマチュアウェイブ選手権 メンズスペシャルクラス 優勝
2022年12月 コールドブリーズ 2022プロアマトーナメントJWAジャパンツアーウェイブ 第1戦 第4位
2023年7月 Gran Canaria Windsurf World Cup  ユースU17 第3位

■活動拠点
御前崎ロングビーチ

※掲載内容は2023年7月時点のものになります。

Interview

静岡発、世界へ。選手インタビュー