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世界中のビッグウェイブに乗りたい

プロウインドサーファー

石井 颯太さん

元プロウインドサーファーの父、そして現役プロウインドサーファーの兄(石井孝良選手)を持つ石井颯太さん。ウインドサーフィンのDNAを持って生まれた石井さんは、5才で初めて波に乗りました。その後、ユースクラスの戦いで次々と世界を席巻し15才でプロ入り。以来、脅威の成長スピードと彼独自の俊敏なプレースタイルで周囲を驚かせています。世界チャンピオンを目標としながらも、最終的な夢は世界中のビッグウェイブを制覇することだと語る石井さん。ウインドサーフィンへの愛と才気に満ち溢れた彼のまなざしの先には、世界へと続く御前崎の海が広がっています。

「ウインドサーフィンがないと生きていけないんです」

――ウインドサーフィンを始めたきっかけは?

初めてウインドサーフィンをしたのは5才の頃。元プロウインドサーファーの父や兄(石井孝良選手)に憧れて始めました。12才のときに出場したメキシコのバハ・カリフォルニアというところでの大会は、僕にとって初めての海外戦。ウインドサーフィンの世界では、良い波が来ることで有名な海岸で、当時は大会の日が楽しみで仕方なかったことを今でも覚えています。世界トップレベルの選手がぞろぞろと出場していたのでインパクトがすごくて、めっちゃ楽しかったです。その後、15才でプロ入りしました。

――ウインドサーフィンのどんなところが好きですか?

好きなところか…、難しいな。僕はウインドサーフィンがないと生きていけないんです。一番の魅力は、海の上を自由に走れるということ。ウインドサーフィンはサーフィンと比べられがちですが、サーフィンよりもスピード感があって、さらに沖まで行くことができます。技術が上がれば、波を上手に使うことでより長く波に乗ったり高いジャンプをしたりすることもできるんです。海の上をこんなに自由に走れるのは、ウインドサーフィンだけだと思います。

僕は特に大きい波が好きなんですよ。その理由は、やっぱりスリルを感じたいから。「死ぬんじゃないか?」と思うくらいの大きな波に乗って、無事に帰ってきたときの「やったぞ!」という感覚がたまらないです。僕が憧れているトーマス・トラベルサという選手は、ビッグウェイバーといって、大きな波だけを求めていろんな国を回るウインドサーファー。すごくかっこよくて、彼は僕のヒーローです。

ウインドサーフィンは父も兄もやっていたから、半強制的のような形で始めたけれど、嫌になったことは一度もありません。父がいつも「自由に楽しんでやれ」という感じで支えてくれていたことが大きいですね。ウインドサーフィンとのびのび向き合えたからこそ、練習に夢中になれて、ここまで上達できたんだと思います。

「ライバルは世界チャンピオン、そして兄」

――今までで一番の成功体験は?

昨年行われたSPICARE OMAEZAKI JAPAN CUPで、プロになって初めて2位を獲れたこと。僕は大会ではいつも優勝しか眼中にないのですが、それまではなかなか試合に勝てなくて、本当に辛い日々を送っていました。だからこそ僕にとってその大会はとても重要で、本番に向けて、ウインドはもちろん、筋トレにもフォーカスして徹底的に準備してきました。大会当日の海は、風が強く波は高い、すごくハードなコンディション。まさに僕の大好きな環境の中で、自分らしいパフォーマンスを見せることができました。

――ライバルの選手はいますか?

ライバルは世界チャンピオン、そして兄です。兄は僕にとって昔から追い越したい存在。でもまだ兄を見ていると「やっぱり試合が上手いな」と感心するし、ウインドサーフィンの実力だけでなく、いろんなことが自分より一個上な気がします。僕は今兄の後ろをついていろんな国に行かせてもらっているけれど、兄は自分で道を切り開いてきた人なので。僕も早く自分の足で世界中の海を渡り歩きたいと思います。

――1日のスケジュール、練習内容を教えてください。

午前中2時間ウインドサーフィンをしたら、休憩を挟んで午後もまた2〜3時間ウインドの練習、その後は陸でトレーナーさんに組んでもらったトレーニングメニューを行います。今の課題は、とにかくスタミナをつけること。大会で1日に何度も試合をすると、後半でいつもバテてしまうので、効率的に疲労回復したり、体力の消耗を最小限にとどめたりできる体づくりが必要です。海外の選手はスタミナ面でも別格で、何度試合してもピンピンしていますから、それに負けないように普段から坂道ダッシュやランニング、エアロバイクなどを行っています。

プロになってからは、世界との差が見えて「壁が大きいな」と感じさせられることが多いです。特に大きいのは、筋肉量の差。波に乗るという点では、一見体が軽い人のほうが有利に思えるかもしれませんが、実際は体重が重いほうが高いジャンプをするときにスピードが出るし、板やテールも大きなものを使えるので、その分風をキャッチできるんです。そうした点で海外選手との体格差の影響は大きいなと感じます。

一方で、すばしっこさは僕の強みかな。波乗りにしてもジャンプにしても、僕はスピードをとにかく速くすることを常に意識しているので、そうした素早さは、細く小さな体の僕ならではのものだと思います。

「夢は、世界中の海を自由に旅すること」

――1年後、3年後、10年後の目標は?

この1年は、ワールドランキングでトップ10入りを目標にやっていきたいと思います。正直めちゃくちゃ難しいとは思いますが、なんとかやってのけたいです。そして3年後は、やっぱり世界チャンピオンを狙いたいですね。さらに10年後は、最終目標であるビッグウェイブに挑戦します。これは小さい頃からの目標なんです。大会ももちろん好きだけど、僕はどちらかというとフリーライドといって、大会にこだわりすぎず世界を自由に回っていろんな波を見つけたいという人間なので。世界チャンピオンの座を獲得したうえで、落ち着いたらいろんな世界を見てみたいですね。

――静岡でウォーターサイドスポーツを楽しみたい人へメッセージをお願いします。

オススメはやっぱり御前崎と静波ですね。御前崎は海もきれいですし、いろんな人がサーフィンをしに来るので、選手にとってはテンションの上がる場所だと思います。初心者の方でもやりやすい海もあるし、もう少しレベルが上がってきたらさらに楽しめるようなコンディションの場所もあるので、オールマイティな海岸です。

初心者の方には静波のほうがオススメかな。スケーターにも人気のスポットで、いろんな人が集まる賑やかな海岸です。やっぱり誰もいない海で始めるより、いろんな人がいる場所で始めるほうが断然楽しいですから。ウォーターサイドスポーツをやっていると、海で出会った人とその場でコミュニケーションを取るということも日常茶飯事です。初心者の方にも、一緒に技術を高め合えるような人がいる環境で始めることで、長く競技を楽しんでほしいなと思います。

【プロフィール】
石井 颯太 (いしい はやた)
2005年5月16日生まれ
静岡県御前崎市出身

インスタグラム:hayataishii
YouTube:Hayata Ishii / ハヤタイシイ

■経歴
2019年 PWAワールドツアーU15 年間優勝
2020年1月 全日本アマチュアウェイブ選手権メンズスペシャル 優勝
2022年3月 SPICARE OMAEZAKI JAPAN CUP(International Windsurfing Tour 第1戦)PRO Men 2位
2022年7月 PWAワールドカップユースクラス 3位
2022年9月 IWT Pacasmayo Classicユースクラス 優勝 / プロクラス 2位

■活動拠点
御前崎ロングビーチ

※掲載内容は2023年3月時点のものになります。

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