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世界王者に向けて、準備の1年

プロウインドサーファー

石井 孝良さん

元プロウインドサーファーの父の指導のもと、5才からウインドサーフィンを続けてきた石井孝良さん。ウインドサーフィンの中でも波乗りやジャンプの技術を競うウェイブという種目を専門とし、中学3年生の頃、当時最年少でプロ入りを果たしました。以来、国内外でその実力を見せつけ、昨年には、インターナショナル・ウインドサーフィン・ツアー(IWT)が主催する世界最高峰の大会において、年間9位の好成績を修めました。現在は御前崎に拠点を置きつつ、大会や遠征のため世界各国の海を転々とする石井さん。世界チャンピオンの座に、いま最も期待がかかる若きエースです。

「世界王者への道のりは、憧れの選手との出会いから始まった」

――ウインドサーフィンを始めたきっかけは?

プロウインドサーファーだった父の影響で、5歳くらいから始めました。当時、父がクラブチームを作ったので、僕も1期生としてそこに所属して、中学校に上がるくらいまでは習い事気分でやっていました。転機となったのは、中学2年生の頃。御前崎で海外の選手を集めてショーのようなものが行われたのですが、そこで見たアレックス・ムッソリーニというスペインの選手がすごくかっこよくて、心に火がついたんです。それ以来、彼の存在をずっと原動力にしてきました。技術的に言えばもう彼と同じくらいのレベルになれたという自覚がありますが、細身でありながらアクロバティックでしなやかな彼のプレースタイルは、今でも憧れです。

――これまでで印象的だった大会は?

プロになった中学3年生の頃に出場した、ハワイのマウイ島での大会は特に印象的です。マウイ島の海は素晴らしくて、「こんなに良い波があるんだ!」と感動したのを今でも覚えています。僕はユースクラスに出場したのですが、プロとして初めての世界大会で3位入賞することができ、「プロウインドサーファーとして生きていこう」という覚悟と自信を抱かせてくれた大会でもありました。

人生で一番の成功体験は、昨年2月に西アフリカのカーボベルデで行われたワールドツアーウェイブ第1戦。世界最高峰のツアーで、日本人では初の6位という成績を修めることができました。コロナの影響で2年間大会が行われてこなかったので、「やっと大会に出られる!」という気持ちで挑んだ結果、一番いい結果を残すことができました。人にはよく「プレッシャーに強い」と言われるのですが、その強みを活かせた大会だったと思います。

「ウインドサーフィンを、ずっと好きでいれた理由」

――競技を続ける上でのモチベーションは?

幼い頃から僕は父に習ってきましたが、父のほうから「練習しなさい」ということはあまり言われたことがないんです。強制はしないけれど、わからないところやできないところがあればめちゃめちゃ熱心に教えてくれるというのが父の指導スタイルでした。もしかしたらそれがウインドサーフィンを嫌いにならず続けられた理由かもしれません。指導者だった父には、今では僕が技を教えてあげています(笑)。

弟もプロウインドサーファーで(石井颯太選手)、すでに試合で当たったこともあるんです。弟は今成長のスピードをどんどん上げている最中なので、僕もすごく良い圧力を下から感じています。弟の存在も大切なモチベーションですね。

――普段の練習内容を教えてください。

基本的には3時間から4時間ウインドサーフィンをやって、その後はトレーナーさんについてもらいながら1時間くらいジムでトレーニングをしています。

海では新しい技に挑戦したり、すでにある技の精度を高めたりする練習がメインです。今はダブルフォワードという技を練習中。世界大会上位の選手はみんなできる技なので、僕も早く自分のものにしていきたいです。

また、僕は海外の選手に比べると軽いほうなので、今よりさらに筋肉をつけて肉体的に動けるようになっていく必要があります。そのため、マシンを使った筋トレや体幹トレーニングも大切にしています。

ときには練習が嫌になることだって当然あります。そういうときは、スノボやサーフィンなどの別のスポーツが良い気分転換になるんです。1日だけ別のことをすると決めて、他のアウトドアに打ち込むことでオンとオフを切り替えています。あとは、画像や映像を編集するのがちょっとした趣味です。自分のウインドの写真を切り抜いてコラージュしたものをSNSに上げたりしています(笑)。

最近は怪我をすることが多く、競技が怖くなってしまうこともあるのですが、トップ選手の映像を見ているとやる気がみなぎってきます。恐怖心に打ち勝つには、映像をよく見て頭の中に成功イメージを叩き込むことが重要。波に乗りながら「うわー!」と声を出して無理やり恐怖を払いのけることもあります。どんなに大声を出しても波の音がかき消してくれるので、恥ずかしくないですよ(笑)。

「目標は射程圏内、次の1年は準備の年にしたい」

――1年後、3年後、10年後の目標は?

めちゃくちゃ客観的に今の自分の実力を見ると、まだワールドツアーで1位になることは厳しいと思います。だからこの1年は、ツアーでできる限り上位に食い込んで経験値を高めていきたいです。そして、3年後は体格的にも成熟し、体力もいちばんあるときだと思うので、世界チャンピオンを狙いたいと思います。10年後もまだ選手を続けているんじゃないかな。チャンピオンの座を維持しつつ、父のように下の世代を育てていけたらいいですね。

――マリンスポーツスポットとしての静岡の魅力は?

御前崎は日本で一番風が強く吹く場所で、特に秋から春にかけては本当に良い風が吹くんです。そのため、たくさんの選手が集まる良い練習場所になっています。初心者で御前崎はちょっとハードルが高いという方も、御前崎周辺を探すといろんなマリンスポーツを楽しめる海岸がたくさんあるので、ぜひ気軽に挑戦してほしいです。初心者にもエキスパートにも向いているというのは、静岡の海の大きな魅力だと思います。

石井 孝良 (いしい たから)
2001年1月13日生まれ
静岡県御前崎市出身

インスタグラム:takara_ishii

■経歴
2015年11月 MAUI ALOHA CLASSICユースクラス 3位
2017年 2016年シリーズJWAジャパンツアー ウェイブチャンピオン 
2018年 IWT2017年度ユースクラス 年間ランキング 1位
2019年 PWA2018年度U20クラス 年間ランキング 2位
2022年 IWTワールドツアー2022 年間9位

■活動拠点
御前崎ロングビーチ

※掲載内容は2023年3月時点のものになります。

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